県庁と市役所、
結局どっちがいい?
「県庁のほうが難しい?」「市役所のほうが働きやすい?」 「給料や転勤はどれくらい違う?」――。 受験先を決めるとき、こうした疑問を持つ人は少なくありません。
県庁と市役所は「どちらが上か」ではなく、やりたい仕事と働き方で選ぶのが基本です。
市町村をまたぐ施策や、 県全体を動かす大きな仕事に関わりたい人。 幅広い部署を経験しながら行政全体を見たい人にも向いています。
福祉・子育て・税・地域振興など、 住民の生活に近い場所で働きたい人。 一つの地域に深く関わりたい人にも向いています。
公務員
県庁と市役所どっちがいい?まず結論を比較表で確認
県庁と市役所で迷っている人が最初に知っておきたいのは、 「どちらが上か」ではなく、「自分がどんな仕事や働き方をしたいか」 という点です。
どちらも地方公務員ですが、 仕事の範囲・住民との距離・異動範囲・採用試験 などには違いがあります。
県全体を対象に、広い視点で政策や企画に関わりたいなら県庁。
住民に近い場所で、地域の暮らしに直接関わりたいなら市役所。
県全体を対象に、市町村だけでは対応しにくい 広域的な政策・企画・調整 を行います。 一つの市だけではなく、県全体を大きな視点で見ながら仕事をしたい人に向いています。
福祉、子育て、税、住民票、地域振興など、 住民の生活に直接関わる行政サービス を担います。 一つの地域に深く関わりたい人に向いています。
ただし、 「県庁のほうが難しいから上」 「市役所のほうが楽」 といった考え方で決めるのはおすすめできません。
自治体ごとに仕事内容や採用試験、異動範囲などは異なるため、 自分が何を重視するのかを整理して比較すること が大切です。
県庁と市役所の違いを一覧で比較
| 比較項目 | 県庁 | 市役所 |
|---|---|---|
| 仕事の範囲 | 県全体・複数市町村にまたがる広域行政 | 市区町村内を中心とした地域密着型の行政 |
| 主な仕事 | 企画、政策調整、産業振興、インフラ、防災など | 福祉、子育て、税、住民票、地域振興など |
| 住民との距離 | 市町村や団体との調整など、比較的間接的な仕事も多い | 窓口や相談業務など、住民と直接関わる機会が多い |
| 異動範囲 | 本庁だけでなく県内の出先機関など、比較的広い | 原則として採用された自治体内 |
| 向いている人 | 広い視点で行政に関わりたい人 | 地域や住民に近い仕事をしたい人 |
| 採用試験 | 自治体・試験区分によって異なるため、必ず最新の募集要項を確認 | |
たとえば、 「県全体の観光振興に関わりたい」 「複数の市町村をまたぐ防災やインフラ整備に携わりたい」 という人は、県庁の仕事との相性がよいでしょう。
一方で、 「子育て世帯を直接支援したい」 「自分が暮らしている地域をもっとよくしたい」 という思いが強いなら、市役所のほうが働く姿をイメージしやすくなります。
迷ったら「自分がどちらのタイプか」で考えてみよう
- 県全体に関わる仕事をしたい
- 政策・企画系の仕事に興味がある
- 複数の市町村を支える仕事がしたい
- 幅広い行政分野を経験したい
- 県内での異動にも対応できる
- 特定の地域に深く関わりたい
- 住民の反応を直接感じたい
- 福祉・子育てなど生活に近い仕事がしたい
- 地域課題の解決に取り組みたい
- 勤務地の範囲を比較的限定したい
県庁と市役所は、それぞれ行政上の役割が異なります。 給料・難易度・忙しさについても自治体や部署によって差があるため、 「県庁だから必ず上」「市役所だから必ず楽」と考えないことが大切です。
ここまでで、 「自分は県庁寄りかもしれない」 「市役所のほうが合っていそう」 と大まかな方向性が見えてきた人もいると思います。
ただ、実際に受験先を決めるなら、 仕事内容・給料・転勤・試験内容・難易度 をもう少し詳しく比較しておきたいところです。
次の章では、まず 県庁と市役所の仕事内容の違い を具体的に見ていきます。
県庁と市役所の仕事内容の違い
県庁と市役所の違いを理解するうえで、 まず押さえておきたいのが「仕事をする範囲」と「誰を相手に仕事をするか」です。
どちらも住民のために働く地方公務員ですが、 日々の仕事の進め方や、行政として求められる役割には違いがあります。
県庁は「県全体を動かす仕事」、市役所は「住民の暮らしを直接支える仕事」 と考えるとイメージしやすいです。
県庁は、一つの市町村だけでは対応しにくい 広域的な行政課題を扱います。
- 県全体の政策・総合計画
- 観光・産業・企業誘致
- 道路・河川などのインフラ整備
- 防災・危機管理
- 医療・福祉政策の調整
- 市町村への支援・連絡調整
市役所は、 住民の日常生活に直接関わる行政サービス を多く担当します。
- 住民票・戸籍などの窓口業務
- 子育て・保育支援
- 高齢者・障害福祉
- 税金・国民健康保険
- 地域振興・イベント
- ごみ・生活環境などの行政サービス
県庁は「市町村をまたぐ仕事」が多い
県庁の特徴は、 一つの市町村だけでは完結しない仕事を担当することが多い 点です。
たとえば、大規模災害への備えを考えてみましょう。 災害は一つの市町村だけで発生するとは限らず、 複数の地域が同時に被害を受ける可能性があります。
そのため県庁では、 市町村や消防、警察、医療機関などと連携しながら、 県全体を見据えて防災体制を整える といった仕事があります。
県全体の観光戦略や
複数地域を結ぶ施策を考える
市内の観光資源やイベントを
地域に合わせて活用する
このように県庁は、 「広い範囲を見ながら、関係機関を調整する仕事」 が比較的多いのが特徴です。
市役所は「住民の暮らしに近い仕事」が多い
一方、市役所は住民と直接接する機会が多く、 行政サービスの最前線 といえる存在です。
たとえば子育て支援では、 保育所の利用、児童手当、子育て相談など、 住民の生活に直結する業務を担当します。
窓口や電話で住民から相談を受け、 状況を確認しながら必要な制度や部署につなぐなど、 目の前の住民の困りごとを解決する仕事 も少なくありません。
そのため、 「地域の人の反応を直接感じながら働きたい」 「住民に近いところで役に立ちたい」 という人は、市役所の仕事にやりがいを感じやすいでしょう。
仕事内容の違いを一覧で比較
| 比較ポイント | 県庁 | 市役所 |
|---|---|---|
| 行政の範囲 | 県全体・複数市町村 | 市区町村内 |
| 仕事の特徴 | 広域政策・企画・調整 | 住民サービス・地域課題 |
| 関わる相手 | 市町村、国、企業、各種団体など | 住民、地域団体、事業者など |
| 住民との距離 | 間接的な業務も多い | 直接対応する機会が多い |
| 仕事のスケール | 県全体を対象にした施策も多い | 地域の生活に密着した施策が多い |
「県庁なら必ず企画、市役所なら必ず窓口」というわけではありません。 県庁にも住民対応がありますし、市役所にも企画・政策部門があります。 ここで紹介しているのは、両者の役割を理解するための大きな傾向です。
受験先を決めるときは、 「県庁と市役所のどちらが上か」ではなく、 自分がどの距離感で地域や住民に関わりたいか を考えてみてください。
広い視点で行政全体を動かしたいなら県庁、 特定の地域や住民の暮らしに深く関わりたいなら市役所という違いが、 一つの判断材料になります。
仕事内容の違いが分かったところで、次は受験生が気になる 「県庁と市役所では給料・年収がどちらのほうが高いのか」 を比較します。
県庁と市役所の給料・年収はどっちが高い?
県庁と市役所で就職先を迷っていると、 「結局、給料が高いのはどっち?」 と気になる人も多いでしょう。
全国平均だけを見ると県庁職員のほうがやや高い傾向があります。 ただし、給料だけを理由に 「県庁を選べば得」と考えるのは早計です。
全国平均では 都道府県職員の平均給与月額のほうが市区町村職員より約1.6万円高い ものの、自治体ごとの差が大きいため、 「県庁=必ず高給」とは言えません。
最新データで県庁と市役所の平均給与を比較
総務省の 「令和7年地方公務員給与実態調査」に基づく一般行政職の全国水準を見ると、 平均給与月額は次のようになっています。
政府統計e-Statでデータを確認する
差額は月あたり約1万6,000円ですが、 この数字だけを見て 「県庁のほうが年収も必ず高い」 と判断することはできません。
なぜなら、公務員の給与は 勤務する自治体・年齢・役職・地域手当・時間外勤務手当など によって変わるからです。
県庁と市役所で給料に差が出る4つの理由
地方公務員の給与は、各自治体の条例や給与制度に基づいて決まります。 県庁・市役所という名称だけで同じ金額になるわけではありません。
勤務地域によって地域手当の支給率が異なります。 都市部では手当の差が給与月額に影響することがあります。
平均給与は在職職員全体の平均です。 職員の平均年齢や経験年数が違えば、自治体間の平均額にも差が生まれます。
時間外勤務手当、通勤手当、住居手当などの支給状況によっても、 実際に受け取る給与は変わります。
「平均給与月額=手取り」ではないので注意
公務員の給与を調べるときに、 特に注意したいのが 「給料」「給与」「手取り」「年収」は同じ意味ではない ということです。
さらに年収を考える場合は、 毎月の給与だけでなく 期末・勤勉手当、いわゆるボーナス なども含めて見る必要があります。
一方、手取り額はそこから税金や社会保険料などが差し引かれるため、 公表されている平均給与月額より少なくなります。
約40万円という数字は、若手から管理職までを含めた在職者の平均です。 新卒・若手職員の給与を知りたい場合は、 志望する自治体の採用案内に掲載されている 「初任給」を確認しましょう。
給料だけで県庁・市役所を選ぶのはおすすめしない
県庁と市役所の給与差は、もちろん就職先を選ぶ材料の一つです。 しかし、公務員として何十年も働くことを考えるなら、 月給の平均差だけで受験先を決めるのはおすすめしません。
第2章で解説したように、 県庁と市役所では仕事内容や住民との距離が異なります。 さらに次の章で解説する 勤務地・異動範囲・転勤の違い は、生活にも大きく影響します。
- 自分がやりたい仕事内容か
- 住民とどのくらい近い距離で働きたいか
- 異動・転勤できる範囲はどこまでか
- 志望自治体の初任給はいくらか
- 地域手当や住居手当などはどうなっているか
全国平均では県庁の給与がやや高い傾向にありますが、 最終的には受験予定の県庁と市役所を個別に比較する のが最も確実です。
給料の違いが分かったところで、 次は生活への影響が大きい 「県庁と市役所の転勤・異動・勤務地の違い」 を比較します。
県庁と市役所の転勤・異動・勤務地の違い
県庁と市役所を比較するとき、 仕事内容や給料と同じくらい確認しておきたいのが 「どこで働く可能性があるのか」 です。
特に県庁は、本庁だけではなく県内各地の出先機関などに配属される可能性があります。 一方、市役所は基本的に 採用された自治体の区域内で勤務するケースが中心 です。
勤務地の範囲は県庁のほうが広くなりやすく、市役所のほうが比較的限定されやすい と考えると分かりやすいです。
本庁だけでなく、県内各地域の出先機関などに配属されることがあります。 職種によっては、複数地域で勤務する可能性も考えておく必要があります。
本庁舎のほか、市内の支所・施設などへの異動はありますが、 勤務エリアは県庁より限定されやすい傾向があります。
県庁は本庁だけに勤務するわけではない
「県庁に合格したら、ずっと県庁舎で働く」 とイメージしている人もいるかもしれません。
しかし実際には、 本庁だけでなく、県内各地の出先機関などが勤務先になる可能性があります。
たとえば一般行政職でも、 本庁で政策立案や予算などに関わる一方、 出先機関では地域の事業や現場に近い業務を担当することがあります。
そのため県庁を志望する場合は、 「県庁所在地でずっと働けるか」だけでなく、 県内のどこに勤務先があるのか まで採用案内で確認しておくと安心です。
市役所も「ずっと本庁舎」とは限らない
市役所の場合、県庁と比べると勤務地の範囲は限定されやすいですが、 採用後ずっと本庁舎で働くとは限りません。
支所、福祉施設、保健関係施設、教育関係施設など、 自治体内にある出先機関へ配属・異動することがあります。
また、人事交流や研修派遣などによって、 国や他自治体などで勤務するケースもあります。
県庁と市役所の勤務地を比較
| 比較項目 | 県庁 | 市役所 |
|---|---|---|
| 主な勤務地 | 本庁・県内の出先機関など | 本庁・市内の支所や施設など |
| 勤務地の範囲 | 県内で比較的広い | 採用自治体内が中心 |
| 異動 | 部署・地域をまたぐ異動がある | 部署・市内施設間の異動がある |
| 市外・県外勤務 | 派遣などで県外勤務となる場合もある | 人事交流・研修派遣などで市外となる場合もある |
| 生活への影響 | 通勤・転居の可能性を広めに考える | 生活拠点を固定しやすい傾向 |
異動は「勤務地が変わる」だけではない
公務員の異動というと、 「別の場所へ転勤すること」 だけをイメージしがちですが、それだけではありません。
福祉から企画、税務から人事など、 担当する行政分野そのものが変わることがあります。
本庁から出先機関、支所や施設などへ異動する場合があります。
経験を重ねるにつれて、 担当者から調整・管理を担う立場へ変わることもあります。
自治体によって異動の考え方は異なりますが、 数年単位で部署を経験しながら 幅広い行政能力を身につけていく 人事運用が行われている自治体もあります。
実際の自治体ではどうなっている?
市役所は県庁より勤務地が限定されやすい傾向がありますが、 支所・施設への異動、人事交流、研修派遣などもあります。 また、県庁でも実際の勤務地や異動範囲は職種・自治体によって異なります。 志望先の採用案内や人事制度を必ず確認してください。
生活拠点を重視する人は勤務地まで確認しよう
勤務地の違いは、 入庁後の生活にも大きく関わります。
- 本庁以外にどんな出先機関があるか
- 自宅から通勤できる範囲か
- 県内転居が必要になる可能性はあるか
- 異動の目安や人事制度はどうなっているか
- 国・他自治体への派遣制度があるか
特に、 「実家から通い続けたい」 「子育てや家庭の事情で生活拠点を変えにくい」 と考えている人にとっては、 給料以上に重要な比較項目になることもあります。
- 県内のさまざまな地域で働いてみたい
- 幅広い行政分野を経験したい
- 勤務地の変化にも比較的対応できる
- 一つの地域に腰を据えて働きたい
- 生活拠点をなるべく変えたくない
- 地域とのつながりを長く築きたい
県庁と市役所のどちらを選ぶか迷ったら、 仕事内容だけではなく 「その勤務地で長く生活できるか」 までイメージしてみてください。
仕事内容・給料・勤務地の違いが分かったら、 次は受験生に直接関係する 「県庁と市役所の公務員試験の違い」 を比較します。
県庁と市役所の公務員試験の違い
県庁と市役所を比較するとき、 「県庁の試験は難しそう」 「市役所なら教養試験だけで受けられるのでは?」 と考える人もいるかもしれません。
しかし現在の公務員試験は、 自治体ごとに採用方式が大きく異なっています。
「県庁だからこの試験、市役所だからこの試験」とは決められません。 志望自治体・職種・試験日程ごとに募集要項を確認することが重要です。
現在の公務員試験は主に3つのタイプがある
行政職を中心に見ると、 第1次試験では大きく分けて SPIなどの適性検査、教養試験、専門試験 が使われています。
民間企業の採用試験でも使われる適性検査。 テストセンター方式を導入する自治体も増えています。
数的処理・文章理解・社会科学・人文科学・自然科学など、 公務員試験で従来から使われる試験です。
法律・経済・行政などの専門科目や、 技術職ごとの専門分野が出題される試験です。
県庁でもSPIだけで受けられる試験がある
「県庁を受けるなら教養試験と専門試験の勉強が必須」 と思われがちですが、現在は必ずしもそうではありません。
たとえば2026年度の茨城県職員採用試験では、 大学卒業程度の早期日程・事務職の第1次試験にSPI3 が採用されています。
一方、従来日程では 教養試験や専門試験などを行う区分もあります。
つまり同じ県庁でも、 「いつ・どの試験区分を受けるか」によって対策が変わる ということです。
市役所も教養試験だけとは限らない
市役所についても同様です。
SPIを使う自治体もあれば、SCOA、教養試験、 独自の基礎能力検査などを採用している自治体もあります。
たとえば2026年度の日立市職員採用試験では、 第1次試験で SCOA総合適性検査とエントリー動画 を採用しています。
SCOAはテストセンター方式で実施されており、 従来型の公務員試験とは受験方法そのものが異なります。
2026年度の実例で比べてみよう
先に参考書を買って勉強を始めると、 実際にはSPI方式だった、専門試験がなかった、 逆に専門試験が必要だったというズレが起こる可能性があります。 まず志望自治体の最新募集要項を確認しましょう。
県庁と市役所の試験を比較するときのポイント
| 比較項目 | 県庁 | 市役所 |
|---|---|---|
| 第1次試験 | SPI・教養・専門など区分によって異なる | SPI・SCOA・教養など自治体によって異なる |
| 専門試験 | 実施する区分もある | 実施する自治体・職種もある |
| 論文・作文 | 実施される場合がある | 実施される場合がある |
| 面接 | 個別面接・集団討論など | 個別面接・動画面接など自治体により多様 |
| 試験方式 | 会場型・テストセンター型など | 会場型・テストセンター型など |
| 重要ポイント | 「県庁・市役所」で判断せず、受験年度・職種・試験区分ごとに確認する | |
受験先を決めたら最初に確認する5項目
県庁・市役所の候補が決まったら、 いきなり勉強を始めるのではなく、募集要項で次の5項目を確認してください。
特に複数の自治体を併願する場合は、 できるだけ 共通して使える試験対策を早めに把握する ことが効率的です。
試験方式を確認してから勉強を始めれば、 必要のない科目に時間を使ってしまうリスクを減らせます。
そして、県庁と市役所を比較するときに次に気になるのが、 「結局どちらのほうが合格するのが難しいのか」 ではないでしょうか。
次は 「県庁と市役所はどっちが難しい?難易度・倍率を比較」 について、単純な倍率だけでは分からない違いまで解説します。
県庁と市役所はどっちが難しい?難易度・倍率を比較
「県庁と市役所なら、県庁のほうが難しいですよね?」 と考える受験生は少なくありません。
確かに、県庁では専門試験を含む区分もあり、 対策科目が多くなるケースがあります。 しかし、「県庁=難しい、市役所=簡単」とは言い切れません。
県庁と市役所の難易度は、名前ではなく「試験内容・倍率・採用人数・面接」の4つで判断する のが正解です。
難易度を決める4つのポイント
公務員試験の難しさは、 単純な偏差値のように一つの数字では表せません。
SPIだけなのか、教養・専門試験まで必要なのかで、 必要な勉強量は大きく変わります。
受験者が多く、最終合格者が少なければ、 数字上の競争率は高くなります。
同じ受験者数でも、採用予定人数が10人か100人かで 合格のしやすさは変わります。
筆記を通過しても、 個別面接や集団討論などで大きく絞られる試験があります。
県庁は試験科目が多い区分では負担が大きい
県庁試験の中には、 教養試験+専門試験+論文+面接 という形で複数の対策が必要になる区分があります。
この場合、法律・経済などの専門科目まで勉強する必要があるため、 SPIやSCOA中心の自治体と比べると 筆記対策の学習量は増えやすい といえます。
一方、第5章で紹介したように、 県庁でもSPIを導入した早期日程などがあります。 そのため、県庁というだけで一律に難易度を判断することはできません。
市役所は倍率が高くなることもある
市役所は筆記科目が少ない自治体もあるため、 「県庁より受かりやすそう」と感じるかもしれません。
しかし、SPI・SCOA方式などで受験しやすくなると、 公務員試験専願者だけでなく 民間企業と併願する受験生が参加しやすくなる という側面があります。
さらに、市役所は採用人数が少ない場合があるため、 受験者数によっては高倍率になることもあります。
専門試験などがある区分では学習量が増えやすく、 論文・複数回の面接・集団討論など、 総合的な対策が必要になる場合があります。
採用人数が少ない自治体では倍率が上がりやすく、 筆記負担が軽い試験でも面接で厳しく選考される可能性があります。
倍率を見るときは「何を割った数字か」を確認する
ここは特に重要です。
ネット上で 「この自治体は10倍だった」 と書かれていても、 その10倍が何を基準に計算されているか を確認しなければ、本当の難易度は分かりません。
たとえば、 「申込者÷採用予定人数」と 「受験者÷最終合格者」では、 同じ試験でも倍率が変わります。
そのため県庁と市役所を比較するときは、 同じ定義の数字同士を比較する ことが大切です。
実際の数字を見ると「県庁だから高倍率」とは限らない
県庁と市役所の難易度を比較するとこうなる
| 比較項目 | 県庁 | 市役所 |
|---|---|---|
| 筆記負担 | 専門試験がある区分では重くなりやすい | SPI・SCOA中心なら比較的対策範囲を絞りやすい |
| 倍率 | 年度・日程・職種で大きく変動 | 採用人数が少ないと高倍率になることもある |
| 採用人数 | 事務職では比較的大規模募集の例もある | 自治体規模によって少人数募集もある |
| 人物試験 | 個別面接・集団討論などを実施する場合がある | 面接・動画・集団試験など自治体によって多様 |
| 結論 | 県庁・市役所という名称だけでは難易度を決められない | |
公務員試験では、申込後に受験しない人や、 複数自治体を併願して途中で辞退する人もいます。 また、倍率が低くても筆記や面接に一定の基準があるため、 「倍率が低い=ほぼ合格」と考えるのも危険です。
難易度より「自分が突破しやすい試験」を選ぶ
受験先を決めるときは、 「どちらが簡単か」だけを探すより、 自分の得意分野と試験方式が合っているか を見たほうが現実的です。
- SPIが得意ならSPI方式の自治体を候補にする
- 法律・経済を勉強しているなら専門試験を活かせる区分も検討する
- 過去3年程度の倍率を確認し、1年だけの数字で判断しない
- 第1次試験と最終倍率を分けて確認する
- 面接回数・配点・論文の有無まで確認する
大切なのは、 「県庁のほうが難しいから市役所にする」 といった決め方ではありません。
自分が受ける年度・自治体・職種の試験内容を確認し、 自分の強みを活かしやすい受験先を選ぶ。
この視点を持つほうが、 合格可能性を現実的に高められます。
難易度まで比較できたら、 次はいよいよ 「県庁と市役所、それぞれどんな人に向いているのか」 を具体的に確認していきます。
県庁と市役所、それぞれに向いている人
ここまで仕事内容・給料・勤務地・試験難易度を比較してきましたが、 最後に気になるのは 「結局、自分には県庁と市役所のどちらが向いているのか」 ではないでしょうか。
もちろん、性格だけで就職先を決める必要はありません。 ただし、日々の仕事で重視したいことを整理すると、 自分に合った受験先は見つけやすくなります。
広い視点で政策・企画・調整に関わりたい人は県庁。
一つの地域に深く入り、住民に近い仕事がしたい人は市役所。
県庁に向いている人の特徴
- 県全体を見ながら大きな政策に関わりたい
- 企画・調整・制度づくりに興味がある
- 複数の市町村や組織と協力して働きたい
- 幅広い行政分野を経験してみたい
- 県内各地への異動にも比較的対応できる
- 目の前の成果だけでなく中長期的な施策にも関わりたい
- 住民に近い立場で働きたい
- 特定の地域に長く関わりたい
- 福祉・子育て・地域振興など生活に近い仕事がしたい
- 住民の反応を直接感じる仕事にやりがいを感じる
- 勤務地の範囲をなるべく限定したい
- 地域課題を一つずつ解決していきたい
たとえば、 「県全体の観光戦略を考えたい」 「複数の自治体を巻き込んだ防災政策に関わりたい」 という人は、県庁の仕事をイメージしやすいでしょう。
一方、 「子育て世帯の相談に直接応えたい」 「地元の商店街や地域イベントを盛り上げたい」 という人は、市役所との相性がよい可能性があります。
「仕事内容」だけでなく4つの軸で考える
受験先を選ぶときは、 興味のある仕事だけで判断するのではなく、 実際に働き続けられるか まで考えることが大切です。
県全体を動かす仕事をしたいか、 一つの地域に深く関わりたいか。
調整・企画を中心に働きたいか、 住民と直接接する機会を重視するか。
県内各地への異動にも対応できるか、 生活拠点を限定したいか。
SPI・教養・専門試験など、 自分が対策しやすい方式か。
5問でチェック|あなたは県庁・市役所どっち向き?
まだ迷っている人は、次の5問に直感で答えてみてください。 正解・不正解はありません。
県庁の仕事との相性がよい可能性があります。 広域行政・企画・調整や、幅広い部署経験に魅力を感じるタイプです。
市役所の仕事との相性がよい可能性があります。 地域密着・住民サービス・生活に近い行政に魅力を感じるタイプです。
このチェックは受験先を考えるための目安です。 県庁にも住民対応の仕事があり、市役所にも企画・政策部門があります。 実際の仕事内容は自治体・部署によって異なるため、 最終的には志望自治体の採用案内や仕事内容も確認してください。
迷ったら「やりたい仕事→働き方→試験」の順で決める
県庁と市役所で迷うと、 「倍率が低いほう」 「給料が高そうなほう」 から決めたくなるかもしれません。
しかし、長く働くことを考えるなら、 次の順番で整理するのがおすすめです。
広域行政なのか、地域・住民に近い仕事なのかを考えます。
勤務地、異動範囲、生活拠点などを比較します。
SPI・教養・専門試験、倍率、日程を確認します。
この順番なら、 「受かりやすそうだから選んだものの、仕事内容が思っていたものと違った」 というミスマッチも防ぎやすくなります。
そして、 「県庁も市役所も魅力があって、まだ一つに絞れない」 という場合は、無理に今すぐ片方を諦める必要はありません。
次は 「県庁と市役所で迷ったら併願するのもおすすめ」 として、併願のメリット・注意点・試験日程の考え方を解説します。
県庁と市役所で迷ったら併願するのもおすすめ
ここまで比較しても、 「県庁にも市役所にも魅力を感じて、一つに決めきれない」 という人もいるでしょう。
その場合は、受験前から無理に片方へ絞る必要はありません。
試験日程が重ならず、受験資格・申込条件を満たしていれば、県庁と市役所を併願するのは有力な選択肢です。
政策・企画・調整など、 県全体を対象にした仕事を目指す。
住民サービスや地域課題など、 生活に近い行政も受験する。
県庁と市役所を併願する3つのメリット
一つの自治体だけに絞るより、 合格後に進路を比較できる可能性が広がります。
数的処理や文章理解など、 試験科目が重なれば学習した内容を複数試験で活かせます。
説明会や面接を経験することで、 自分に合う仕事内容・組織をより具体的に考えられます。
ただし「受けられるだけ受ける」はおすすめしない
併願先を増やせば、その分だけ合格可能性が上がるように感じるかもしれません。
しかし、受験先ごとに 試験方式・論文・面接・自治体研究・志望動機 の準備が必要です。
増やしすぎると、 第一志望の対策まで薄くなる可能性があります。
第1次試験だけでなく、 面接・論文・二次試験の日程まで確認します。
SPI・SCOA・教養・専門など、 受験先を増やした結果、対策範囲が広がりすぎないか確認します。
「なぜ県庁も市役所も受けるのか」を、 自分の受験軸とつなげて説明できるようにします。
試験日は必ず最新の募集要項で確認する
公務員試験の日程は年度ごとに変更されることがあります。
また、同じ県庁でも早期日程・従来日程など複数の試験があり、 同一試験内で複数職種へ申し込めないケース もあります。
自治体・職種・試験日程によって申込条件は異なります。 同じ試験内で複数職種への重複申込みを禁止しているケースや、 面接日程が重なるケースもあります。 必ず受験年度の公式試験案内を確認してください。
併願するなら志望動機を使い回さない
県庁と市役所を併願するとき、 筆記試験の勉強は共通化できても、 志望動機まで同じ内容にするのはおすすめできません。
県庁と市役所では役割が異なるため、 「なぜ県庁なのか」 「なぜその市役所なのか」 をそれぞれ説明する必要があります。
このように、 根本の価値観は共通していても、 「なぜその組織なのか」まで具体化する ことが重要です。
- 受かればどこでもいいから大量に受ける
- すべての自治体で同じ志望動機を使う
- 試験日程だけ見て面接日程を確認しない
- 試験科目を広げすぎて第一志望の勉強が遅れる
- 面接で併願状況を隠すために話を作る
併願自体よりも、 「なぜその組み合わせなのか」を一貫して説明できることが重要です。
公務員面接「併願状況」の答え方を見る →県庁と市役所のどちらかに今すぐ決められなくても問題ありません。
まず両方を候補に残し、 試験日程・仕事内容・説明会・選考を通じて、自分に合う方を具体化していく という考え方もあります。
受験先と併願方針が決まったら、次はいよいよ勉強です。 次章では 「県庁・市役所に合格するための勉強法」 を、試験方式別に解説します。


